*女神転生 Яe-biRth*
序章
*天城 霞*
空が高い。
記録的に長い猛暑を抜け、ようやく街路樹も赤く染まり始めた。
風は冷たさを伴いながらも、まだ冬の訪れを告げるには弱々しく優しい。
ざぁっ…
突如吹いた少し強い風に天城霞はコートを抑えながら呟いた。
「ねぇ…」
「…うん?」
隣にいた同年代の女性が応える。
霞は無言で空を見上げると、女性もつられるように視線を上げる。
何処までも透きとおりそうな一面の青い空が広がっている。
「うわぁ、綺麗」
「うん、綺麗ねぇ」
さぁっ…
また、風が吹く。
「ちょっと風がキツくなってきたかな」
長い髪を抑えながら、女性は横目で霞を見た。
「メグちゃんの髪、綺麗ねぇ」
霞も横目で視線を合わせる。
「な、何言ってるのよ、もう。カスミだって綺麗じゃない」
「うーん…でも癖毛だからねぇ…」
体質なのか髪の色素が薄く、ブラウンに近い。
さらに少しカールのかかる癖毛は、寝起きにいつも手を焼いていた。
逆にもう一人の女性、橘川惠は純和風、といった感で真っ直ぐに伸びる黒髪が映える。
「いいなぁ…羨ましい」
少し拗ねた様子で霞は感情を素直に出した。
「うーん、そうかな? 私はカスミのが羨ましいんだけどな。モテるし」
「そんな事ないですよぉ」
「そう? 昨日も男子生徒一人泣かせたって聞いたけど?」
「だって…私、よくわからないし…」
困ったようにうつむく。
「そうかなー? カスミィ、池上先輩とか、ちょっと気にしてない?」
下から覗き込んで、惠は悪戯っぽく問いかける。
「えぇ! いや、別に何もないですよぉ、前、ちょっと助けてもらっただけでぇ…」
「ふぅーん…やっぱり何かあったんだー…また、話、聞かせてよね」
「う、うん」
返事を受けて、お互い微笑み会う。
「さ、ずっとココに居ちゃ遅刻しちゃう。早く学校行こ」
「うん」
背中を押され、霞は一つ言い出せなかった言葉を飲み込んで歩き出した。
それはこの生活がずっと変わらないと信じていたからこそ…
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